英国の工場からＥＵ各国にしょうゆを関税ゼロで輸出している正田醤油@群馬

英ＥＵ離脱、北関東企業にも衝撃　欧州戦略見直しも
2016/6/25 7:00


英国の国民投票で欧州連合（ＥＵ）の離脱派が勝利したことを受け、北関東の企業にも衝撃が広がった。なかでも欧州に生産拠点を持つ企業は、戦略の練り直しを迫られる可能性がある。

正田醤油（群馬県館林市）は英国の工場からＥＵ各国にしょうゆを関税ゼロで輸出している。英国がＥＵから離脱した場合はそれらに関税がかかる可能性があり、同社は「ＥＵの関税率や英ポンド相場の動向を注視していく」方針だ。

2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、フランス、イタリア、スペインなどでしょうゆの需要が伸びている時だけに「最小限の影響にとどまってくれれば」と話す。

医療機器のマニーは昨年、欧州で売り上げを伸ばそうとドイツの歯科治療機器会社を買収した。高橋一夫最高財務責任者（ＣＦＯ）は「ＥＵ経済の不透明さが増したため、（欧州市場の開拓戦略は）様子見になるだろう。インドを含めたアジアの比重を高める可能性もある」と話す。

影響は欧州市場にとどまらない。急激な円高は輸出、海外事業の比率の高い企業の利益を圧迫する。

製菓・製パン機器製造のレオン自動機は売上高の半分以上を海外が占めており、「不安定な為替は頭が痛い」（中尾明功常務）という。同社の場合、円高が１円進むと利益が１千万円少なくなる。17年３月期は１ドル＝110円と想定しており、今後の動向を注視していく方針だ。

自動車部品、しげる工業（群馬県太田市）の正田寛名誉会長は「自社の米国工場に現地で調達できない部品を輸出しており、１ドル＝100円を割ると収益に悪い影響が出る」と身構える。主要取引先である富士重工業の国内生産車の約８割が海外向けで、部品の値下げを求められる可能性もあるという。

日銀前橋支店の神山一成支店長は「群馬県にも世界的に活動している企業は多く、影響は少なくない」と指摘する。

茨城県内には日立建機やコマツの工場があり、周辺には下請け工場も多い。油圧ショベルのエンジン関連の部品を納める日立市の金属部品メーカーは「建設機械はもともと資源安で海外需要が落ち込み注文も減っていた。円高によるさらなる影響が心配だ」と話す。

株価の大幅な下落に個人投資家は警戒心を強める。水戸市の中心街にある水戸証券水戸支店には、多くの常連客が集まった。前日までＥＵ離脱はないと楽観していた人も多く、株価の動きを不安そうに見つめていた。同支店の約30人の営業担当も説明に追われた。

シンクタンク、あしぎん総合研究所（宇都宮市）の豊田晃常務は「人々の生活防衛の意識が高まり、消費マインドがより慎重になる恐れがある」と懸念する。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB24H97_U6A620C1L60000/

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