鳩山由紀夫のまとめ

【論説】鳩山首相は「賞味期限切れの不思議ちゃん」…リーダーとして無能どころか、社会人としてダメ。なぜか「いじめ」にさえ見えてきた

　鳩山内閣の支持率が土砂崩れ状態である。ただし昨年夏の衆院選で民主党に投票したのは全有権者の31％程度（投票率69％で得票率45％）だから、支持率20％台は不思議ではない。むしろ70％を超えたスタート時のほうがどうかしてた。民主党に投票していない人も、鳩山内閣を支持したわけだ。何をどう考えるとそうなるのかは謎だが、まあ、ムードだけの人気投票に確たる理由なんか求めてもしょうがない。「なんとなく面白かったから」だろう。

　でも、もう面白くない。内閣支持率もテレビ視聴率も、数字を動かすものは同じである。みんな、鳩山内閣という新番組に「飽きちゃった」のだ。少なくとも私は飽きました。私の場合、最初から支持はしていない。だが以前は、「友愛」を大安売りするトンデモ発言を笑っていられた。「CO2排出量25％削減！」から「命を守りたいのです！」あたりまでは、まだ茶化し甲斐があったのだ。しかし、今や痛々しくて苦笑する気にもならない。

　これは何に似ているかというと、会社や学校で「不思議ちゃん」と遭遇した人々の反応に似ている。場の空気と無関係におのれの妄想だけで暴走する不思議ちゃんが出現すると、最初はみんな面白がって相手にするものだ。飲み会でも笑いのネタにできる。だがすぐに飽きてしまい、顔を見るだけで鬱陶しい。かといって、説教をする気にもなれない。妄想世界でヒラヒラと舞っている人に「もっと常識を持て」と諭したところで、徒労感が残るだけである。

　鳩山サンも、もはや「リーダーシップに欠ける」だの「総理としての資質がない」だのと真面目に批判すればするほど、相手にしている人のほうが間抜けに見える。だってあの人、リーダーとして無能どころか、社会人としてダメなんだもん。

　それを確信したのは、連休中の沖縄県知事との会談風景だ。とにかく挙動がおかしかった（なぜかアンガールズの田中という芸人を思い出した）。 いつ椅子に腰掛けていいのかもわからずオドオドしているし、声や目に力がない。かりゆし姿も、人をナメている。あれが面接試験だったら、どんな会社だって採用しないはずだ。というか、県知事の前で就活中の学生みたいに見えちゃう総理大臣って、その時点でアウトだろ。

　また、あの人の「思い」という口癖は、大半が「つもり」に翻訳できる。「県外移設という思いで努力してきました」は、「ホントは県外移設のつもりだったんですぅ」だ。失敗の言い訳として最悪である。ふつうは上司に怒鳴りつけられるだろう。世論調査で「部下にしたくない有名人」を訊いたら、総理大臣がダントツになるに違いない。あの人に基地問題を任せるのは、新米のバイト君にM&A交渉をやらせるようなものだ。

　もっとも、ああいう人が上司だったら、逆に部下は楽なのかもしえない。不祥事は不問に付してもらえるし、多少スキルが低くても上司より仕事ができるように見える。だから民主党内でも「鳩山おろし」が本格化しないのではあるまいか。

　もともと民主党には、「この人を総理に」という、自民党の派閥にはあった情熱がない。あったのは政権交代へのモチベーションだけだ。総理なんか誰でもよかったのだろう。だから政権を握って以降、民主党の人たちは実に生き生きとしている。原口サンも前原サンも枝野サンも、権力の座を存分に楽しんでいるような風情。ひとり首相だけが、権力の重みに喘いでいる。

　こうなると、できもしない仕事を押しつけられている鳩山サンが、「いじめ」に遭っているようにさえ見えるのだった。たとえば大手広告代理店には、有力クライアントのコネで入社したバカ息子が大勢いると聞くが、会社はそれを飼い殺しにして、要職にはつけないだろう。難しい仕事をやらせるとしたら、嫌がらせ以外の何物でもない。

　海兵隊の抑止力をいまごろ認識した総理は、「官邸に入らないと見えないものがある」と呻いた。総理大臣という仕事も、官邸に入るまでは「できる」と誤認していたに違いない。でも、もう「ボクには無理」とわかったはず。気の毒だから、もう辞めさせてあげようよ。民主党のマニュフェストに「総理は鳩山」とは書いてないから、公約違反にもならないでしょ？

ソース（SAPIO　6/9号　43ページ　「日本人のホコロビ」　深川峻太郎氏）

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